4.カウントダウン

2/16
前へ
/74ページ
次へ
「あの時は……本当に死んじゃうかと思ったんだ」  思いがけなく本音が口から出た。  きょとんと目を見張った後、響は笑い出した。 「そんなに簡単に死なないよ。死ねないよ。せっかくのに」    そうだ。  それまではどこにも居場所がなかった。  響はいつだって傍観者(ぼうかんしゃ)だった。  強く()かれるものもなく、何かに夢中(むちゅう)になることもない自分は、どこか変なのだろう。  きっと、何かが欠落しているのだ。それが何かはわからないが。  寄ってくる男も女も、本能的にそのことをかぎ取り、離れていく。  気が付けばいつも一人だった。  その方が気楽だった。  興味のない話に相槌(あいづち)を打つことも、声を合わせて笑うことも意味のないことに思えて仕方なかった。  だれとも分かり合えないまま、誰かに必要とされることもなく、日々に流されていく。  自分にとっての本物(リアル)は、どこにあるんだろう。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加