4.カウントダウン

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   けれど相変わらず周りには誰も寄っては来ない。  寄って来るのは思惑(おもわく)のある人ばかりだ。  今はもうそのことを何とも思わない。 「でも、売れなくなったらきっと捨てられる」 「まだ、売れてないだろう」  成瀬は響の肩を叩いた。  細い肩、その下に(ひそ)必死(ひっし)な思いと鍛えられた筋肉、変わらない表情の下の熱い情熱、触れたらきっと一蓮托生(いちれんたくしょう)、どうにもならないところへ堕ちて行く。  いっしょに堕ちていく覚悟はあった。 「こう見えてもいろいろ考えてはいるんだ。芸能界ってものを知るために芸能人と付き合ってみたり、恋の一つもしてみれば何か変わると思って」 「恋はしようと思ってするものじゃなくて、気が付いたらしているものだと思うが」 「古いな。今はマッチングアプリの時代だぜ? ちょっといいかもと思えば会ってみる、付き合ってみる、合わなければさようなら、はい次へ。そうやっているうちにいつかは運命の人に出会えるんだ」 「おまえ、まさか」  沢渡なつみ、日高ユリア、須藤季春、それ以外にも?
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