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「まあ、とにかく成瀬さんがやれというならやるよ」
「え?」
「成瀬さんのことを信用しているから」
目を伏せて付け加える。
「急にどうしたんだ」
「いなくなったら困るんだ」
はっとして響の顔を見た。
「ちゃんと治療をしてほしい」
「何の話だ」
「気が付かないとでも思った? こっそり病院に行って薬を飲んで、辛そうな顔をして二日酔いだなんて下手な嘘をついて。知っているよ。もう何年も酒の席では飲むふりをしてほとんど飲んでいないじゃないか」
成瀬は体中の力が抜けていくのを感じた。
ばれていたのか。
「もう、子供じゃないんだ。守ってもらわなくても大丈夫だ」
不意に響は立ち上がり、呆けたようになっている成瀬の腕に手をかける。
「知名度をもっと上げるためにCMやテレビの仕事も受ける」
「本当にいいのか」
「うん」
「俺はただの胃潰瘍だぞ」
「いいんだ。その代わり、長生きしてくれよ、成瀬さん」
成瀬の腕を一瞬、強く握ってから、響は離れた。
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