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舞台の袖から何度も見た、その細い後ろ姿が発光しているように見える。
放たれた感情。
細胞を満たし振動させる声。
いいぞ、からっぽになるほど歌え。
そら、お前の場所だ。
強いライトの光が降り注ぐステージへ、踏み出せ。
瓶の先からぽたり、ぽたりと規則的に落ちていく滴が管の中を通っていく。管の先には血管の浮き出るやつれた腕がある。
「武道館ライブ、始まったかしら」
「お父さん、行きたかっただろうね」
うつらうつらとスポットライトの強い光とライブの高揚感をどこかに感じながら成瀬は闇の中にいる。
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