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涙には二種類ある。人のために流す涙と、自分のために流す涙だ。
この涙はどちらだろう。
たぶん両方だ。
……響、最後にあの曲を歌ってくれないか。俺たちの始まりの、あの歌を。
キイイーン、マイクのハウリングの音に拍手と歓声でうるさかった会場が一瞬、静まった。
「みなさんのおかげで今日まで歌ってくることができました。僕の始まりの曲、デビュー曲を歌わせて下さい」
歓声と拍手。
顔をあげ、目を閉じて浴びるように受け止める。
息を吸い、ゆっくり吐く。
オーケー、ベストコンディションだ。
響は、頭の上で大きなマルを作り、バックメンバーを振り返った。
ギタリストが親指を立てる。
ベーシストが弦をはじいて、頷く。
ドラマーがスティックを掲げて鳴らす。
キーボードからメロディが流れた。
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