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その日の深夜、あたしは飛び起きた
今までが全部夢で、やっぱりあたしは一人ぼっちなのかも?
「秋ちゃん、大丈夫?」
あたしと障子戸の間に、見慣れた冴香ちゃんの背中が見えた
…片膝立ちで、両手に握った物騒なモノを障子に向けて
あ、うん…大丈夫…ちょっと怖い夢見ちゃって…
あたしは夢の内容を覚えている限り話す
今の生活が全部夢で、一人ぼっちで大阪のマンションのベッドにいるんじゃないかと
「秋ちゃん…」
あたしの名前を呼びながら、冴香ちゃんが抱き締めてくれた
「あたし達、ずっといますから!描さんも!みんな秋ちゃんの傍にいますから!だから…泣かないでください…」
冴香ちゃんに言われてはじめて気付いた
頰を濡らしている涙に
障子にシルエットが一つ浮かんでいた
障子戸を塞ぐように立ち、僅かに遅れてその左右にさっきの冴香ちゃんと同じ姿勢の影が並ぶ
「えっと、秋ちゃん?大丈夫?」
一番聞きたかった声が、障子越しに聞こえて来る
うん…ハルちゃんもシイちゃんもごめんね
「ししょー、こんな時くらい三人で一緒に寝てあげたらどうすかあ?秋さんと二人っきりだと…」
「そうそう、秋さんの貞操の危機だもんねー!ハルさん珠には良いこと言いますね!」
何やら揉めながらその二人の影はなくなった
「えーっと、秋ちゃん、冴香さん?どうします?あの二人はああ言ってくれましたが…」
障子越しに、躊躇いがちな意見が届く
「「結構です!!」」
思ったより強い口調で冴香ちゃんとハモった
二人で顔を見合わせて笑った
「そ、そうですか?じゃあ、僕は一回りしてからにしますので…おやすみなさい」
おやすみー
そう答えたあたしの視界に、卓袱台に置いてある写真立てが入った
そこには自撮り棒で無理矢理撮った、でも三人ともが満面の笑顔の、冴香ちゃんとあたしとネコのスリーショットの写真が飾ってあるのだ
何年も、ううん、何十年も「あなたに会いたい」と思い続けてきた、ネコと一緒に撮ったものだ
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