どまじめ君の可能性

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『い、今すぐ……開始、してください。ぼ、僕なら……大丈夫です』 何が大丈夫なのか、そんな説得力が微塵もない事を言うやつには、ちょいとばかり灸を据える必要があるな。 『20分後に開始だ。それと訓練の予定を決めるのは俺だ。はき違えんな』 強い口調で背中越しにいるシェイルに言い放つ。そして何の反応もまたず、俺は管制室へと戻った。 それからというもの、何度もシミュレートを繰り返しても、あいつがコースを周回することは出来なかった。 だがそれでも、シェイルは何度も何度も立ち上がり、諦めず、ぶっ倒れる寸前まで必死に体を動かしまくって、少しずつ、針の先程度ではあるが、距離を伸ばしていった。 スコアは1点も出すことは出来なかったが、あいつの根性だけは高得点に値するものだった。戦場において根性論なんざ、あまり当てにするもんじゃないが、諦めないという精神力は、非常に重要だ。 何かを守るためなのか、自分のためなのか、あいつがなんでそこまで強さに執着していたのか、詳しくは聞かなかったから俺も知る由もないが、少なくとも、ああいうタイプは……伸びるもんだ。 まぁ同時に、長生きは出来ないだろうが……それもすべてはあいつ次第だろう。 そう考えていた俺を見事に、あいつは良い意味で裏切ってくれた。 シェイルはその後も無事に生き続けていた。あいつに感じた、執念の可能性。 それを信じてみた俺の目も、まんざら節穴じゃなかったことだな。 ふふ、いやはや、懐かしいやつを思い出しちまったもんだなぁ。この時代でも、そんな骨のあるやつはいるんだろうか? そんなことを思えば、これから始まる新人教育にも、多少は精が出てきたような気がする。 まだ開始まで時間はある。まぁ、気長に……待つとするかねぇ。 任務疲れのせいか、心地よい睡魔が訪れてくる。そのままソファーの上で横になり…俺はゆっくりと目を閉じて、ひと眠り、つくことにした。
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