どまじめ君の可能性

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『あぁ……全く、やれやれだぜ』 ひと仕事を終えて、ようやくの帰宅。疲れを吐き出すように、独り言を放ちながらソファーへともたれ掛かる。 『……ほんと、まいったもんだ』 また独り言が漏れてしまう。いやだがしかし、ハルファで目覚めてからというもの、色々な任務を任されてきたが、まさか俺が。 『新人の教育とはねぇ』 そう、俺がなんでここまで精神的疲労を抱えているのかという要因がそれだ。 今アークスは、度重なるドールズとの戦闘、加えて新たな驚異となるスターレスの出現のせいで、深刻なまでの人手不足に陥ってしまっている。全アークス支部のアークスのほとんどが、休む間もなく懸命に汗水垂らしながら、いつ死ぬかも分からない状況の中、割に合わない給料と、市民様の平和を守るために涙ぐましい労働に殉じている。 当然、俺もその中に含まれている。で、だ…そんな中更に任されることになったのが、さっき俺が深々と吐き出した独り言ってわけよ。 別に新人教育が初めてってわけじゃあない。特殊部隊に配属されていたときは、昇進にするにつれて、新入りのケツを鍛え上げる場面も当然増えていったし、他の部隊で派遣教官として招かれた事もあったさ。 だがいかんせん、俺はオールドアークスだ。2000年というとんでもなく長いコールドスリープから目覚めた遺物だ。 骨董品だ。今のアークスとはフォトンの性質もまるっきり変わっちまってるし、身につけ方や、成長の仕方もまた然りってやつよ。そんな遥か過去の産廃物となった技術やノウハウが、今の新人アークスに刺さるかどうか。 ここまで言えば、俺がいかにストレスを抱えているか、分かるだろ? まだ訓練期間が始まったわけじゃあないが、はぁ~…気が重いぜ。おまけにどんなケツの青い新人が来るか、分かったもんじゃねぇ。経験上、クソ生意気なやつには徹底的な躾をもって、分からせてやるのが基本だったからなぁ。 それで問題行動扱いされて、面倒な始末書ばかり書かされる事になりゃ、こっちとしては堪ったもんじゃねぇ。 毎日俺のストレスが、破裂寸前の榴弾になりそうだ。 いっそ、馬鹿みたいにクソ真面目やつばっかりだと、こっちとしては扱いやすいんだがなぁ。 まぁそんな都合のいい奴ばかりじゃないってのは分かりきってることだが、都合のいいように考えたくなるのが人間ってもんよ。
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