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不意に聞こえた声にも、急いで逃げたり振り返ったりしなかったのはさすがだ。
しかし、微かに。自覚出来る程確かに、彼の手は震えていた。もう呼ばれないと思っていた名前を呼ばれた事が、泣きたいくらい嬉しくもあった。握手したくなる程に。
詐欺セブンを目指し、同じ手配書のメンバーになって早幾年。
一時は詐欺セブンを超えたとされ、指原のくせに生意気だ等と言われた事もあった。
立派に、と言えば語弊があるが、この道を極めた彼もとうとう卒業する時が来たのかもしれない。
ああ、卒業までに一度だけでも、名前を呼ばれて良かった。
そしてすぐに、ホームに警官隊がやって来た。
先頭の若い警官の鋭い視線に射抜かれ、全身が凍えた様に動けない。ただ震えるだけだ。
何だかんだ言ってもテレビの影響力はまだ強いんだな。
どの番組でも、前田敦央、大島優吾と卒業した後で一番目立っていたのは俺だった。仕方ないさ。
もういいさ。もう俺は戦わない。
さあ、いっそ派手に逮捕してくれ。
────しかし。
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