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誰かいる
怨神勇人は、不思議な依頼をヱビス不動産と言う不動産屋から、請けた。
今は空き家のはずの借家に、人の気配があるので、原因を調べてほしいと言うものだった。
45年前に建てられた一軒家。
「さて、吉なのか、凶なのか調べますか」
勇人は不動産屋から借りた鍵を使い戸を開け、家の中に入った。
おかしな話だ。今はだれも住んでいないはずの家に人の気配がするなんて。
話だとここ1ヶ月ほど前から気配を感じ初めたらしい。
とりあえず家の中に入った勇人は、間取りを確認する。
2Kで戸締まりも不審な点はない。
勇人は、居間へと移動する。
「飯でも食べて、何か起こるまで待つとするか」
勇人は持参したコンビニ弁当を食べ始めた。
……数時間後、何も起こらない。
「これは、もしかして長期戦になるかもしれないな」
何か起こるまで、居間でゴロゴロしているしかない。電気、水道、ガスの通っていない空き家なのだから。
今回の依頼は、暇との戦いかもしれないと勇人は思った。
怪奇が起こるまで、3日待った。
3日目の夜。
タタタタタタ。
足音がした。勇人しかいない家の中から。
勇人は胡座をかいて座り込んでいるから、勇人の足音でないことは明らかだった。
「居る」
タタタタタタ。
また、足音。だが、姿は見えない。
勇人は、自分に見ることのできない妖怪かもしれないと思った。
それで思い至ったのは、座敷童子だった。
座敷童子。
子供の姿をしている妖怪で、住み着いた家を幸運に導くと言われている妖怪だ。
しかし、大人である勇人には座敷童子は見えない。
子供に見てもらうのが1番良いが、その子供が座敷童子とうまく意志疎通できるかどうか、そこに問題あった。
そんな子供、勇人の周りにはいなそうだった。
どうすれば良い?
勇人は可能性を考えた。
子供、子供、子供。子供?
必ず、子供が見ることができる?
「そうか!」
勇人は、借家から出て、車に乗り込んだ。
勇人は急いで山へと車を走らせた。
木霊のいる山へと。
木霊(こだま)。
樹齢100年以上の木に宿る妖怪だ。
その姿は、子供とは言いがたい切り株のような姿だったが、言動は幼稚な妖怪だった。
「ぼくでだいじょうぶかな?」
「じゃないと困る」
「みえるかどうか、あったことないからほしょうはできないよ」
「ああ、分かってる。だけど、他に頼る当てがない」
勇人は、木霊を車に乗せて借家に戻るのだった。
木霊を連れ、借家に戻った。
「木霊、どうだ?」
「うん。みえるよ」
「そうか。それは良かった。何て言ってるんだ座敷童子は?」
「ここがすごしやすいところだって」
「そうなると、出ていくつもりなさそうだよな」
「もちろんだって」
「どうすりゃいいんだ?」
勇人は考えた。大家さんと座敷童子が両方納得行く方法を。
その方法を思いついた。
その方法とは?
勇人が思い至った方法。それは、勇人がこの家に住むということだった。
物音の原因を知っている勇人にとって問題はない。座敷童子は幸運を引き寄せてくれる妖怪。そして、大家さんにとっても入居者は嬉しいはずだ。
勇人は、これからの幸運を願いながら、木霊を山に戻し、不動産屋に車を走らせた。
終わり
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