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7年ほど前のこと。
私は後に夫となる彼と交際していた。
その時、私のお腹に小さな命が宿った。否、宿ってしまった。
そのことを相談すると、彼は驚きながらも喜んでくれた。
そして、その場で結婚を申し出てくれた。
嬉しかった。
彼は本当に信頼できる人だと心から思った。
でも、それ以上に大きな不安に苛まれた。
当時、私はまだ若かった。
社会人になってまだ日も浅かった。
親に何て説明しよう。
会社に何て説明しよう。
怒られるかもしれない。
後ろ指を差されるかもしれない。
そんな不安が積み重なって、のし掛かって、そして……
私は流産した。
泣いた。
彼も泣いていた。
泣きながら私の手を握り、ずっと寄り添ってくれていた。
それから更に2年ほどの交際を重ねて私たちは結婚した。
そうして、晴れてこの身に命を宿して私は二人の娘を持つ母親になった。
苦しみを乗り越えて掴み取った幸せな日々。
そんな中、唐突に突き付けられた過去の心残り。
『早希子』
それは、生まれることができなかった長女に付ける予定の名前だった。
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