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結局、除霊は行わなかった。
『早希子』はそのまま一緒に連れて帰ることにした。
私には見えないけど、上の子が楽しそうに話をしているので、多分そこに居るんだと思う。
その後、私はこれまで通りの日常に戻った。
そんなある日、お絵描きをしていた上の子が私に一枚の画用紙を手渡してきた。
「はい、これママにあげる」
「何かな?」
「さーちゃんだよ」
「え?」
「ママにはさーちゃんが見えないんでしよ?」
「うん」
「だから、あたしが描いたよ」
「この子が……早希子」
そこにはにっこりと笑う可愛らしい女の子の絵が描かれていた。
やっと会えた。
ううん、見えないけどずっと私のそばに居てくれてた。
「ありがとう」
私がお礼を言うと娘は満面の笑みで頷いた。
それから、娘の隣の空間に向かって私は笑って見せた。
「さーちゃんも、いつもありがとうね」
返事は私には聞こえない。
いつか、直接会って話せる時が来れば良いな。
そんなことを思いながら、私は娘が描いた『早希子』をもう一度見る。
その笑顔は、微かに頷いているように見えた。
(終)
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