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昴が手を合わせるのを合図に、ガタッ、ガタガタガタ、歓喜天が震えだした。
「どうか歓喜天さま。自作を最終選考に残してください」
すると、歓喜天がお供え物を待つように、ぴたりと動きを止める。昴はピアスを一つ外して、歓喜天の前に置いた。『不浄仏の怪』によると、再び歓喜天が震えなければ願いは成就しない。願望に対して供物が安すぎるのだろうか。
突然、胸ポケットの中のスマホが鳴り出した。画面の表示から祖父の入院している病院だとわかる。昴は手に取って話しかけた。
「もしもし」
「わたくし市立病院のものですが、緊急連絡先の確認のためにお電話を差し上げました。息子さん、でよろしいですか?」
「あ、いいえ、僕は石川稔の孫です」
ガタッ、視線の下の方で何かが音を立てた。昴はスマホ越しに看護師の声を聞きながら歓喜天を見遣る。
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