ふるえる願望天

18/20
前へ
/20ページ
次へ
「対価は、葉山———」  母の名前を言い掛けた瞬間、ブブっと、ポケットのスマホが着信を知らせた。電話に出ると編集者からで、確認し忘れたことがあったので、連絡したと言う。 「応募するときに本名を書いてくださったじゃないですか。振り仮名がなかったものですから、なのかなのかお聞きしようと思いまして」 「(こう)、です‥‥」  そう答えた途端、昴の胸に激しい痛みが走った。右手からスマホが滑り落ちる。畳に手をついて、逆の手で胸を押さえると、歓喜天がガタガタと震え出した。痛みに耐えきれず倒れ込み、視界いっぱいに歓喜天が映ったところで、昴は意識を失った。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加