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「おーい、お兄さんおるかー?」
しんと静まり返った店内に、戌亥の声が響く。しかし返事は返ってこない。戌亥が無人の店を奇妙に思っていると、ガタ‥‥ガタガタ‥‥不意に物音が聞こえた。店の奥からだった。格子戸を開けてみると、薄暗い廊下の突き当たりに部屋があり、そこから音が洩れ聞こえている。
戌亥が部屋の戸を開いて覗き込むと、奇妙な光景が広がっていた。一瞬、状況がよくわからなかった。昴が畳に寝転がって眠っているようにも見えたが、そうではない。口元から一筋の血が流れていた。そして、昴の顔のすぐ近くには歓喜天が置いてあり、ガタガタと震えている。まるで、昴の死を嘲笑うかのようだった。
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