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プロローグ
先程までの喧騒が、嘘のように静まり返ったオフィス――
片桐課長がリーダーとなり、開発していた企業向けのアプリが完成し、更には大口の契約が決まり、オフィス内はお祝いムード一色だった。
今、私ひとりのフロアは照明が落とされ、窓の外に広がる美しい夜景と、私のパソコンの光だけがオフィス内を照らしている。
『カチャッ』と静かなフロアに、扉の開く音が響きビクッとする。開かれた扉にもたれ掛かる人物が、こちらを見ていた。
「片桐課長!? お帰りになったんじゃ……」
「課長? 今は誰もいないんだ。昔の通り呼んだら?」
「へ!? 今まで私と知り合いだって、隠していましたよね?」
「まあ、それが一番安全だったんだ」
「え!?」
全く今の状況を理解できなくて戸惑う私と、妖艶な雰囲気を出し微笑む片桐課長……
「ほら、呼んでみろ」
「そ、蒼空先輩……」
「フッ、懐かしいな。でも先輩はいらない」
「ええ!? どういうことですか?」
「今日から凛花は俺のもの」
「……」
驚きすぎて言葉も出ず、目を見開き固まっている私の元に、颯爽と近づいてきた。
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