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気づけば、目の前まで来ていた先輩の腕の中に、すっぽりと抱きしめられていた。
一日仕事をしていたはずの先輩からは、仄かにシトラス系のいい匂いがする。ずっと憧れてきた蒼空先輩の想定外の行動に、すでに頭は真っ白で何も考えられない。
ただ、先輩の胸から聞こえる鼓動も少し速く、緊張しているのは私だけではないようだ。
自然な動作で、先輩の手が私の顎に添えられて、軽く持ち上げられた。見慣れたイケメンではあるが、至近距離で視線が交わり、迫力が半端ない。
次の瞬間――
蒼空先輩の唇が、私の唇に触れる。驚き抵抗する間もなかった。
最初は触れるだけのキス。
軽く触れ合うだけのキスが、だんだんと深くなり、私の口内を侵す。
『ファーストキス』の私にとって、息をするタイミングもわからない。キスの合間に、必死に息をする。激しくなるキスに、抵抗する術もない。
「ンッ……」
無意識に声が漏れた。私の艶っぽい声が、フロアに響き渡る。
長年憧れ、片想いし続けている相手からの突然のキス――
本気なのか――
気まぐれなのか――
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