プロローグ

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 蒼空先輩に憧れ、恋愛経験なくこの歳まできた私には、先輩の真意が全くわからない。常にモテモテの人生を歩んでいる先輩だが、彼女の噂は不思議となかった。  いつも女性とは、うまく距離を置いているように見えた。硬派でクールな先輩は、謎が多いのだ。  高校を卒業して、大学に進学した先輩は、何度か部活に顔を出してくれていた。だが、私が部活を引退する頃を最後に来なくなり、それ以来会うことはなかったのだ。  私も高校を卒業後大学に進学し、そして今の会社に就職した。  やりがいを感じ、仕事一筋で頑張っていた私の元に、突然蒼空先輩との再会の瞬間がやって来た。  ヘッドハンティングされて、課長という立場で、突然私の上司になったのだ。  オフィスに蒼空先輩が現れた瞬間、女性達から黄色い声が上がったのは言うまでもない。  驚き固まる私を見ることなく、淡々と自己紹介していた当時の姿を思い出し、切ない気持ちが蘇る。  他の社員同様、『はじめまして』と挨拶されてからは、片桐課長と呼び学生時代のことは封印してきた。
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