二度目まして、旦那さま。わたしがあなたの花嫁です。

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「わたくし、あなたにお会いしたかったのです。亜人国のことを知ったときから、ずっと」 「残虐な悪魔とされる我に? おまえ、自虐的すぎないか?」 「そう噂されるからこそ、よけいにお会いしたくなりました」  あの優しい彼が変わってしまったとしたら、それはきっとエルラのせいだ。  己を庇って死んでしまった人間の娘。味方であるはずの、同じ国の人間に殺されてしまった憐れな娘に対して、彼は心を痛めたに違いない。  人間に嫌気がさしていて、勝手に送りつけてきた花嫁を殺してしまう可能性だってある。  だけど、それでもエリュシアはこの国へ来ただろう。  自分を受け入れてくれた亜人族と、その王にもう一度会うために。 「御迷惑をおかけしていることは承知しています。これはわたくしの身勝手な想い。たしかに我儘なのでしょう。ですからどうか、使用人として雇っていただければと思います」 「……なにを」 「いろいろできます、たぶん。いささか体が付いていかない部分もありますが」  記憶のなかにあるエルラは、神殿を清めるのも仕事だった。広い神殿をひとりで掃除するだなんて、今思い返してもひどいイビり方だと思う。肌荒れもひどくて、ヴァルラムも驚いていた。  身体的な理由ですべて同じようにはできないと思うけれど、やってやれないことはないから。 「必要ない。子どもは寝ろ」 「寝る。つまり、閨を!?」 「お、おまえは阿呆か。なぜ私がそんな倫理観に欠く真似をっ!」  動揺したのか言葉が乱れたヴァルラム。その背後にある木立が揺れた。 「卑しい血の王よ、死ね」  声が響く。  がさりとした葉音に振り向き、ヴァルラムが(しゅ)を纏わせた手刀を放つなか、エリュシアもまた走った。  敵の狙いは陛下――その足下。  エリュシアは両手を広げてヴァルラムの前に立ちはだかった。
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