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 家に着くと、晶久は一目散に自室へ飛び込んだ。  自分がどの時間の列車に乗ったのか、どの道を歩いて家までたどり着いたのかも思い出せないまま、ただ乱れた呼吸と勝手にあふれてくる涙をベッドに押し付ける。  愛していた。誰よりも彩月を愛していた。彩月さえいれてくれれば幸せだった。彩月と一緒に生きていけたら、この地球(ほし)で自分が一番の幸せ者だとさえ思えた。なのに――。 「どうしてだよ、彩月」  弱々しくささやかれた晶久の声は、 「どうして……」  夜の闇に溶けて消える。 「彩月……、答えてくれよ」  晶久は、ベッドに押し当てていた顔を壁際の飾り棚に置かれている一枚の写真立てへと向ける。 「彩月……」  視線の先、飾られているのは、愛する妻、彩月のだった。
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