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メールで教えられた住所は群馬県にある小さな町の民家だった。
地図アプリで住所を検索すれば、経路が分かる。便利なこの時代に感謝する。
何も恐れないと誓った心がさざめいていた。
彼女に会えると信じてここまでやってきてしまった。
僕を待ち受けるものは何なのか、ただそれが知りたくて。
そっとその民家の呼び鈴を鳴らす。
表札には「菱沼」と書かれていた。
ややあってドアが開いた。
中から出てきたのは僕と同じくらいか、少し若い二十代の女性だった。
彼女だ。
ひと目見ただけで、僕には分かった。
毎日眺め続けていた写真の面影がある。それでいて、写真の人よりもずっと綺麗だった。
「遠野翔吾さんですか?」
「……はい。あなたは、菱沼詩音さんですよね」
彼女は無言で頷く。
彼女の目は僕を見て、ショックを受けているようだった。
本当に会いに来るなんて、と責めるような色だ。
やはり冷たい、と僕は感じた。
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