探偵の好奇心は泥沼に気づけなかった

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「ノートPCか」  俺は呟いてご婦人の方を見た。 「お願いします」  好きにしていい、という目の潤みに俺は頷いて「それでは失礼して」とこの場にいない持ち主に対し一応の礼儀の言葉を呟き遠慮なくPCを開いた。 「パスワード……ねぇ?」  大方予想通りだ。  俺はスマホのライトをつけてキーボードをあらゆる方向から照らした。文字を打つ仕事をしていないと聞いているから、このPCは動画とかSNSサイト閲覧用の可能性が高い。ならば、打たれる文字は基本同じだ。 「ビンゴ」  案の定、上部に羅列している数字のキーだけが使い込まれていると伺える痕があった。他のキーが新品同様にこすれていないことから、これがパスワードだろう。こすれているキーを適当に打ち込めば、左から順に打っただけでPCの立ち上げに成功した。もうそれだけで、俺はこの40後半の娘さんが単純で騙されやすい思考を持っていると予想した。10も上回る女性のPCを見るのは全くワクワクもしないし気持ちのいいものではないし、もし厄介な事件だったら面倒くさいな、と思うも今回の報酬は3か月仕事しなくても食っていけるぐらい貰っている。  なので、きちんと、まじめにやらなければならない。  俺は使いこまれたと伺える真っ白なマウスを使って、まずはホームのわかりやすい所に鎮座しているSNSサイトのアイコンを押した。すぐにログインでき、馴染みのあるタイムラインが表示される。主にイケメンモデルや俳優の呟きが並ぶことから、イケメン好きの女性とすぐに察せれた。とりあえず手がかりとして参考になるのは、と本人のホーム画面にいくと「明日はチョコさんとホテルに行く日。愛しいあなたに会えるのが楽しみ」という呟きで終わっていることに気づいた。  それが、丁度行方不明になったと言われる前日に投稿されたものだった。 「おっとぉ……?」  早速手掛かりゲットではないだろうか。  早速チョコさんという人とのやりとりを見てみようとDMを開いてみると、出るわ出るわ長文のやりとり。  行方不明者の長文は妙にハートが多いのに対し、向こうのDMは非常に淡白で絵文字が一切なかった。それが異様な光景に思えて寒気が走るのを感じた。  ひとまず長文やりとりが始まっている12月最初のやりとりから見てしまおう、と好奇心が疼くままに俺はDMの履歴を遡った。
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