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夕暮れ時に抱きしめて
本当なら家に帰りたい。
でも、それは出来ない。
なぜなら、家に帰ったらお風呂に入らなくてはいけないからだ。
私は掃除機のあの「ブォーッ!」という音の次にお風呂が大嫌いで、暖かな水が肌につく感覚は考えるだけでも気持ち悪い。
でも、もう少しすると町内放送の5時の知らせで恵ちゃんが帰ってくるから、帰らなくちゃいけない。
時間は刻々と過ぎていく。私はどうすればいいんだろう。
恵ちゃんをお迎えに行きたいけど、でもお風呂に入るのは絶対いやだ。
しばらく考えていると周囲が騒ぎ出した。
5時の放送がなってしまったのだ。私と一緒に公園で遊んでいた子供達が一斉に帰ってしまった。一人ぼっちになってますます焦ってしまう。
その時、公園に隣接した家の窓から楽しそうに飼い主と戯れる飼い猫を見た。
私は決めた。
家に帰ろう。
玄関の前では大好きな恵ちゃんが私の帰りを待っていた。
「今日は遅かったね〜楽しいことはあった?」
いつものように恵ちゃんは私を抱き寄せた。
私は「にゃーん!」と大きな返事をしてみせた。
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