Withered Tears

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「寿、お待たせ。ちょうどそこにいたから捕まえてきた」  芙季が連れて来たのは、先程医者と一緒にやって来た看護師だった。 「買収したわよ。彼女が御坂粋のところまで連れてってくれるわ」  いたずらっ子みたいな顔で笑うと、芙季は指を折ってピースサインを作り、前に突き出した。 「御坂粋はね、いつもいつも、言葉も態度も行動も全然足りないのよ。だから、あなたは不安になる。でも、あなたはそんな御坂粋が好きなんだものね。仕方ないわね」  眉尻を下げて目を糸のようにして笑う芙季がとても頼もしかった。 「”寿、リナが案内してくれるわ。御坂は集中治療室を出て、さっき一般病棟に入ったって。リナ、よろしくね”」  リナはにっこりと笑うと、寿の手を握った。 「”こっちよ。今ね、交代の時間で病室に出ている看護師の数が少ないよ。早く行こう”」  芙季が寿の背中を軽く叩いた。 「行ってらっしゃい」 「ありがとう、芙季さん」  寿はリナと共に病室を出た。  リナはファッションが好きで、特にミシェルのブランドが好きなのだと話した。 「”皆はレオネンのミサカが大怪我をして運び込まれたほうに驚いていたけど、私は寿がウィレムと一緒に来たほうが衝撃的だったわ”」  リナは寿を知っていて、ショーをチェックしてくれていたようだった。 「”少し待ってて。部屋に誰かいるか見てくるから”」  粋の病室の前に着いた。リナはノックをして中に入ると、すぐに出てきた。 「”入って。スイも起きてる”」  急に胸が苦しくなった。心臓が肥大して、スピードを上げて鼓動を打ちつけている。  大丈夫。そう言い聞かせて、寿は病室に入った。
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