Fragments

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「”狙われているならなおのこと、堂々としないと。悪いことはしていないもの”」  寿は帽子を取って、サングラスと一緒にアンベルに返した。 「”迷惑を掛けてごめんなさい”」 「”嫌だ、謝らないでよ。私もウィレムも寿の味方よ。こちらこそ、変に気を回してごめんね。行こう、外でウィレムが待ってる”」  数日前に粋から退院したとLINEが来た。  寿が退院して一か月が過ぎていた。  粋の記憶の中であやふやになっている寿の存在を証明するために、これから、粋に会いに行く。  アンベルとウィレムは、ブリュッセル南駅まで、寿を迎えに来てくれた。寿が退院してからずっと、アンベルは粋の様子を逐一教えてくれた。蒼依のことも警戒してくれていたみたいだった。  アンベルの話では、階段から落ちた前後のこと以外は覚えているみたいだった。ベルギーに来る前の日本での生活が、一部ぼんやりしているらしい。時間が経てば、徐々に思い出すだろうと、医師は話しているようだった。  ウィレムは粋の車でやって来ていた。  お礼を言い後部座席に乗り込むと、すぐに発車した。
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