Fragments

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 ウィレムの運転する車が高速道路を降りた。  ブリュッセル南駅を出てから、車内にはアンベルの声が響いていた。アンベルなりに気を遣ってくれたのだろう、入院中の粋の話や、退院してからしばらくはアンベルの家に居候していた話を聞かせてくれた。  そんな中、ウィレムが突然口を開いた。 「”ずっとそわそわしてるんだよ”」  寿はバックミラー越しにウィレムを見た。 「”コトブキが来る日が決まってから、スーはずっと落ち着きがないんだ”」  病室であんな別れ方をしたからだろうか。  粋からは何度かLINEが来た。  最初のLINEは、手術成功の報告とと偉そうにとかそんなこと言える立場ではないとか卑屈な寿へのフォローと、賠償の意味を問うものだった。  寿はそのうちに知れるだろうとその問いには答えなかった。  でも、その後からLINEの回数は減っていき、途絶えた。  たまに寿からLINEを送ると、元気そうな返信が来た。本当に待っていていいのか、不安な日々を過ごすうちに、退院の連絡が来た。 「”今日から自分の部屋に戻るって、ピーターに手伝ってもらって掃除してると思うよ”」 「”元気そうで良かった。入院中はあんまり連絡も来なかったから”」  アンベルが振り返った。意を決したような顔をしている。
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