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「”スーには言うなって言われてるんだけど、いいよね、ウィレム。私は話すよ。あのね、スー、手術の後、本当に大変だったの。腫れも痛みも引かなくて、汗掻きながら苦しそうにリハビリしてた”」
ウィレムがアンベルの頭を指で突いた。
「”おしゃべりだな、アンベルは”」
「”スーは絶対に自分からは言わないよ。何で連絡が来なかったのか、理由を知らないとコトブキだって不安だよ”」
バックミラーに映るウィレムが眉を顰め、仕方ないといった顔で息を吐きだした。
「”……リハビリ、確かに大変そうだったよ。口数も少なかったし。でも、痛みに負けないでリハビリを頑張れたのは、コトブキの存在があったからだって、スーが話していた”」
本当は、そういう時に、近くで支えたかった。
寿は俯いた。返事ができなかった。複雑な思いをどうすればいいのか、分からなかった。
「“スーは本当に頑張ったんだ。だから、労ってやってほしい。記憶を戻すために、いろいろと努力もしてるから、あいつを見捨てないでやってほしい”」
見捨てるの意味が理解できなかった。
どちらかといえば、見捨てるのは粋で、見捨てられるのは寿だ。
粋の車が、アンベルの家に到着した。奥にあるだろう階段を思い浮かべて、胸が苦しくなった。
「“到着だ。あと一つ、あまり驚かないでやってね”」
バックするために振り返ったウィレムが、ウィンクをして見せた。
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