Fragments

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「私、ディナーをご馳走になったら、帰るよ」 「え、ええ!! なんで! 帰るの?」  寿は帰りのタリスを調べようとスマホを操作した。 「今の私はさ、粋にとって『後輩』だから、こうやって恋人ヅラで泊まりに来られても困るのは当然だと思うんだ。私が逆の立場だったら、戸惑うもん」  また粋が寿を見た。黒目が小さくなっている。首も傾げているから、今話したことの意味が分からなかったようだ。 「ごめんね。私はいつも勝手に怒って、粋を追い詰めてる。私の予想だけど、粋は私と別れようと考えてたと思うんだ」  黒目がますます小さくなった。 「きっと、他の人に心が動いていたんだと思う。ベルギーに来てから、粋は私といると窮屈そうだった。心が離れてるって感じてたのに、認めたくなくて突然この部屋に来て、怪我をさせて……」 「いやいや、ちょっと待てって。芹沢の言っている意味が全然分かんない。それってさ、俺のせいにして別れようとしてる? 芹沢は、勝手に忘れて足も怪我してサッカーもできない坊主頭の俺を見限ったってこと?」 「ちが……」  粋の顔が怒っていた。こんなに怖い顔は、試合でしか見た覚えがない。
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