Fragments

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「どうも、下着姿で抱きつかれたみたいだ。たぶん、俺は慌ててパーカーを肩に掛けたんだ。ウィレムにhelpってメッセージを送って、ウィレムが来て、そうこうしている時に寿が来たらしい。俺も動転してて、うまく対応できなくて、勘違いさせてごめん」  真実は分からない。ウィレムが、スーは何も罪を犯していない、スーはコトブキを裏切っていない、と言っていたのを思い出した。 「蒼依さんにも改めて話したし、もうこういうことはないと思う」 「……粋は優し過ぎるんだよ。だから皆勘違いする」 「うん。ごめん。俺はチョロいと思われるみたいだ。そんなにチョロそうかな」  粋が腕を組んで首を傾げた。  簡単に手に入れられそうに見えるよりも、むしろ魅力的な条件を備えた好物件であるため、強かな女子たちに、どうしても手に入れたいと思わせるのかもしれない。  落とし甲斐があると思われてるなら、蒼依は諦めないだろう。 「……粋は誰にでもキスをする?」 「しねえよ」  ムッとしたのか、粋が眉間に皺を寄せた。 「私がキスをしてって言ったら、してくれる?」  返事はなかった。目を上げると、粋は寿を見ていた。 「キスして」  口から心臓が出そうだった。  粋が背中を屈めた。  目を閉じると同時に、唇が重なった。
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