Fragments sui side

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 目が覚めた時には、個室に移っていた。  頭も痛いし、体も痛い。足は高く固定されている。  階段から落ちたのも、記憶障害も、夢ではなかったみたいだ。  泣きながら謝る女の子の夢は見れなかった。  病室のドアがゆっくりと開いた。  蒼依さんかと思って、何とはなしに身構えた。  一つ思い出したことがあった。なぜ、蒼依さんが俺の部屋にいたかだ。蒼依さんは下着姿になって、迫ってきた。それを俺は「無理だ」と断った。  でも、謎がある。なぜ、断ったんだ?  別に彼女がいるわけでもないし、受け入れても良かったんじゃないか?  女の人が捨て身で体当たりするって、結構な勇気がいるはずだ。蒼依さんの胸は、わりと大きかったし、禁欲生活をしたからってサッカーが上手くなるわけでもないし。  何で無理だって言ったんだろう。その理由が分からなかった。 「”スー、起きてるか?”」  訪ねてきたのは、アンベルと帰ったはずのウィレムだった。 「”ああ、ウィレム。どうした、帰ったんじゃないのか”」 「”明日手術だろう。俺もアンベルも今日はこっちに泊まるよ。ピーターは明日の手術前には来るって。トムとマルクも来るよ”」  トムは俺とレオネンを繋げたエージェントで、マルクはレオネンのゼネラル・マネージャーだ。  契約解除になるのかもしれないし、そうなると莫大な違約金を払わなくちゃいけないだろうし、残れたにしても、この足では今季は何も活躍できないだろう。  一気に憂鬱な気持ちになった。体も痛いし余計だ。
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