Fragments sui side

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「”……こういうのって、日本語でバチが当たったってって言うんだ”」 「BACHI?」  ウィレムが訝しげな顔をした。バチが当たるを英語でなんて言うのか分からない。 「あー……punishmen?」  意味が通じたのか、ウィレムが頷いた。 「straf……”オランダ語で罰って意味だよ”」 「”ストラフか。俺はよっぽど日頃の行いが悪いんだな”」  困った人がいれば助けてきたし、お年寄りにも席を譲ってきた。人に優しく接してきたつもりだけど、お前は人の気持ちが分かってないと、与井たちにはよく叱られた。 「”そうだ。お願いがあるんだ。ウィレム、俺の部屋に行けるか? スマホを持ってきてほしいんだ。日本の友達に連絡を取りたい。親にも言っとかないとな”」 「”いいよ。ピーターに持ってきてもらおう。友達も親もそうだけど、コトブキに……”」  ノックもなしに、いきなり病室のドアが開いた。 「スー起きた? ”ウィレム! ホテルに戻ったのではなかったの?”」  また蒼依さんが来た。または失礼か。入院のことを色々やってくれてるらしいから、感謝しないといけない。 「”アオイを迎えに来たんだ。もういいだろう。アンベルと食事に行くんだ、一緒に行こう”」  ウィレムの提案を良く思っていないのか、意外だったのか、蒼依さんの顔が歪んだ。 「”私はいいわ。もう少しスーのそばにいるから”」 「”スーは眠たいそうだ。ほら行こう、話なら明日でもいいだろう。じゃあな、スー。ああそうだ、退屈だろうからこれでも読んでろよ”」  ウィレムが投げて寄越したのは、ベルギーのサッカー雑誌だった。受け取り顔を上げると、ウィレムにしては珍しく強引に、蒼依さんの肩を抱いて病室から出そうとしていた。 「”ちょっと、ウィレム痛いわ。スー、私、明日も朝一で来るから。おやすみなさい”」 「”アオイ、自分の病院はいいのか?”」  大丈夫よとか何とか怒ったような声が聞こえて、ドアが閉まった。
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