Rosy Bride

2/16
前へ
/371ページ
次へ
 昼を過ぎたところで、やっと待合室が空いてきた。  車で待っている粋にLINEをした。五分ほどでやってきた。 「張ってたの、治まった?」  心配そうに眉を顰めて、寿が座るソファの横に立つと腰を屈めた。  髪は以前の長さに近かった。ウェーブのかかった長めの髪が、屈んだ粋の睫毛に掛かった。同時に、パーカーの紐が揺れた。  もうだいぶ空いてきたから、座ればいいのに、粋はいつも立って待つ。 「大丈夫だよ。座ってたら治まったから。朝の散歩を張り切り過ぎたかな」  早朝ランニングをする粋を途中まで迎えに行くのが、寿の日課だった。  冷えてきた秋の朝の空気は、ちょうどいい具合の湿度でとても心地がいい。  今朝は、迎えに行って帰ってきてから腹が張って硬くなっていた。健診にはバスに乗って一人で行くつもりだったのに、心配した粋がついてきた。 「明日からしばらくはお休みだな」 「お休みしなくても、距離を短くすれば大丈夫。時間をもう少し遅く出るようにする」  粋が納得していないのは一目瞭然だった。 「お医者さんに訊いてみよう。それからだな」  難しい顔をする粋の前に、小学高学年ぐらいの男の子が立った。粋をじっと見上げている。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1807人が本棚に入れています
本棚に追加