Rosy Bride

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「そうか。じゃあ、しばらく練習は休め。それで、走れ。走って走って、体力を付けるんだ」  男の子も母親も寿も、目を瞬かせた。 「練習以外で走ってるか? 俺は、朝晩、必ず十キロ走るぞ。いいか、どんなに上手くても、ピッチでスタミナ切れになったら使いもんにならないだろ。今は、技術を磨くんじゃなくて、体力を付けろ」  確かに粋はよく走りに行く。いつも走っている。 「これから体も大きくなって、やりたいのに上手くいかないことがいっぱい出てくる。でも、できることも増えてくる。それに、スタミナがあればなんとかなる。と、俺は思ってる」  粋はある意味サッカーに関しては天才だ。天性のものがある。こんな人に、「スタミナがあればなんとかなる」何て言われて響くものだろうか。  寿の心配は取り越し苦労に終わった。  男の子は、少年は目を輝かせて大きく頷いた。 「お母さん、俺、これから走る。お父さん、付き合ってくれるかな」 「LINEしてみたら? 最近、お腹が気になるって言ってるし、きっと一緒に走ってくれるよ」  母親がスマホを渡すと、勢いよく画面の操作を始めた。やっぱり瞳は輝いている。粋の言葉はちゃんと響いたみたいだった。
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