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「おばあちゃんに顔見せてくるね」
寿もリビングを出ると、奥の和室に向かった。
「おばあちゃん、入るよ」
返事はない。寿は遠慮なく襖を開けた。
「入っていいなんて言ってないよ」
瞳はテレビを観たまま、祖母が憎まれ口を叩いた。
呆れて見ていると、コンセントの抜けた炬燵の薄掛けを上げた。
「座ったらどうだい」
寿は差し出された座布団を二つ折りにし尻の下に入れて、祖母の横に座った。地べたにそのまま座ってしまうと、立ち上がるのに難儀するから、座布団やクッションは必須だった。
「順調なのかい?」
テレビからバラエティ特有の笑い声が流れた。祖母は、リモコンに手を伸ばすと、スイッチを切った。
「うん。順調だよ。来月の結婚式も無理をしなければ大丈夫だって」
来月、寿と粋は結婚式を挙げる。
結婚と妊娠の順番が逆になってしまったし、何よりも粋の復帰や引っ越しもあるし、結婚式なんてしなくていいと思っていた。
思っていたのに、ミシェルに押し切られた。
ミシェルのドレスを着て宣伝する名目も含めて、全てミシェルプロデュースだ。
招待客だけは、寿と粋が決めた。
プレスも入るのかと思っていてが、一切入らないと芙季が教えてくれた。
写真は撮影するが、それ以上は何もないらしい。
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