1718人が本棚に入れています
本棚に追加
「蒼依さん、何か話したいことでもあったの?」
上目で俺を見る蒼依さんの足下がふらつきだした。
「大丈夫?」
転ばれたらかなわない。咄嗟に支えると、腰に腕を回されて胸に寄りかかられた。
これは駄目だ。皆に阿呆御坂と言われる俺でも分かる。
両肩を掴むと、少し自分から離した。この両肩を掴むのはいいかもしれない。こっちで距離をコントロールできる。
「ごめんね、ふらついちゃった。大丈夫、ちゃんと歩けるから」
寄りかかられたのは故意ではなかったみたいだ。蒼依さんは俺から離れると、しっかりとした足取りで歩き出した。
「もしかしたら、なんだけど。スーの感じているストレスの原因は、彼女との格差?」
心臓が驚くほど大きく鼓動を打った。
言葉にされると、結構な衝撃だ。
そうか、俺は寿との格差にストレスを感じていたのか。
すとんと胸に落ちてきた言葉のおかげで、靄が晴れたような気がした。
ついでに、他人の目にも俺と寿の間には格差があるんだと痛感した。
海外移籍ぐらいじゃ駄目なんだ。
もっと、もっと世界に認められなくては、寿には釣り合わないんだ。
胸の奥が急に冷たくなった。
どうしたら、ふさわしい男になれるのか。泣きたくなってきた。
最初のコメントを投稿しよう!