Falling Down sui side

21/36
前へ
/352ページ
次へ
 俺は心の……そうだ、魂の底から寿を求めているし、きっと、寿も俺を求めてくれているはずだ。  ただ、俺が未熟すぎるが故、寿の笑顔を曇らせている。この状況を打破するには、もっとたくさん努力をしなくちゃいけない。 「寿に追いつくために必死なだけです」  また手を握られた。靴ひもを結び直すやり方はもう通用しないだろう。どうしようかと迷って半歩下がったら、俯いていた蒼依さんが顔を上げた。目が潤んで見えた。 「追いつかなくてはいけないの? 君が格差を受け入れられないなら、きっぱり諦めたほうがいいと思うよ」  諦める? 「君は十分に頑張ってる。これ以上自分を追い詰めても、報われないよ。それだけじゃない、追いつけない自分を受け入れられずに、壊れるよ」  報われない?  追いつけない?  壊れる?  言われている意味が全く理解できなかった。 「私は、チームのドクターとして、君の心の健康を支え、心の平穏を守る義務がある。今のところ、君の悩みはプレーには影響していないみたいだけど、もし影響してくるようなら、チームと対話するように君に勧めなければいけない」  分からない。  寿のために努力しようと、サッカーを頑張ろうとしているのに、プレーに影響するわけがない。  え?  今俺は、何て考えた?  寿のため? サッカーが寿のため?  違うだろ、サッカーは自分のためだ。人のためではない。  どんなに辛くても頑張れるのは、サッカーは裏切らないからだ。  何より、寿が応援してくれるから、頑張れるんじゃないか。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1718人が本棚に入れています
本棚に追加