Falling Down sui side

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「蒼依さん、俺、分かった。凄いね、さすが、チームが雇ったメンタルドクターだ」  蒼依さんの手を解いて、スマホを出した。もう十一時半だ。  すぐにマチューに電話をした。蒼依さんを送って行ってほしいと伝えたら、一分で向かうと言われて切れた。  まだ俺を心配してくれているのか、蒼依さんは悲しそうな怒っているような顔をしている。 「マチューが送って行ってくれるって。あ、来た! マジで早えな。”マチュー、頼んだよ。”じゃ、蒼依さん、またね。今日はありがとう。おやすみ」  走って来たマチューに手を挙げて、俺は部屋へと全速力で走って帰った。  そうなんだ。  もしかしたら、俺は寿に追いつけないかもしれない。  それが確定の未来だとしても、俺は走り続けなくちゃいけないし、応援してくれている寿のために背中を追わなくちゃいけない。  弱音も泣き言も口に出してる暇なんかないんだ。  早く電話しなくちゃ。  誕生日おめでとうと伝えなくちゃ。  何で、昨日の夜、零時を回った瞬間に電話をしなかったのか、今になって悔やまれる。  一番に伝えたかった。  来年は必ず一番に伝えよう。  その瞬間、絶対にそばにいよう。  体が軽った。このまま、パリまで走れそうだった。
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