Falling Down sui side

24/36
前へ
/352ページ
次へ
 部屋に帰ってきて、飲みかけの水を飲み干してから、寿に電話を架けた。 「遅いよ粋。忘れられたかと思った」  拗ねた声が聞こえてきた。可愛い声に、今すぐ抱き締めたくなった。 「ごめん。今日さ、チームの仲間が部屋に遊びに来たんだ。この間会ったウィレムも来たよ」 「楽しかった?」 「うん。久々に大笑いした。それとさ、チームのおじいちゃんメンタルドクターが引退するって言って。新しく来たのが日本人だったんだ。日本語で色々話せたのも久しぶりでさ。ドクターも今日来たんだけど、すごく楽しい夜だったよ」  ドクターが女だとは言うのをやめた。  また、余計な心配を掛けるだけだ。 「……その話をするために架けてきたの?」  しまった。  つい、自分の話をしてしまった。寿は、俺の話なんて聞きたくないだろう。うっかりした。 「違う! ごめん、俺ばっかりべらべらと。誕生日おめでとう、寿。二十一歳か」 「ありがとう。また一つ、大人になった! あの、皆さんはもう帰ったの?」 「うん帰ったよ。あとさ、四月の中旬にそっちに行けそうなんだ。そこでプレゼント見に行こう」  今まで、きちんと寿の誕生日を祝えたことがない。  最初の誕生日もその後も、練習が忙しくて、二人でご飯を食べて終わりだった。  あの頃に比べれば、今は金もある。好きなものを買ってあげようと考えていた。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1719人が本棚に入れています
本棚に追加