Falling Down sui side

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「ごめん、粋。四月の中旬ぐらいまではニューヨークなんだ。ミシェルのブライダルのショーに出るって言ったでしょう? ニューヨークブライダルファッションウィークがちょうどその辺りなの。だから下旬なら大丈夫だと思う」  そうだった。  ジェヒとショーに出るんだ。悔しいけど、絶対に寿は綺麗なはずだ。 「そうか、下旬はちょっと俺が難しいな。夏までお預けかな。ワールドカップの二次予選が終わった頃なら会えると思う。俺が招集されればだけど」  夏までお預けかな、なんて、俺も役者だ。  プレーオフは六月の半ばには終わる。  本当はその前には会いに行くつもりだ。  プロポーズしてからワールドカップの二次予選に挑む。プロポーズも成功して、ワールドカップの出場権を得て、最高しかない。 「大丈夫だよ。御坂粋は凄いんだから。絶対に招集されるよ」  やっぱり寿は優しい。  寿に凄いと言われると、本当に自分は凄いのだと思える。  寿の言葉を噛み締めた。胸の中が温かい。 「……次に会う時は、指輪届いているかな」  やばい、指輪の話題だ!  届いているよ。言いたいけれど、我慢だ。 「そうだね。届いたら連絡するよ。さ、寝ようか。明日も練習だ」  もう十二時を過ぎていた。  わざとらしく欠伸を噛み殺した。俺は全然眠くない。本当はいつまでも話していたい。  でも、明日も寿は忙しいのだろう。寝不足は肌に表れると前に言っていたし、もう寝たほうがいい。 「……うん。指輪、楽しみだな」  本当に可愛い。楽しみにしてくれている寿のためにも、しっかり練習してまずはレギュラーシーズンを優勝しなければならない。
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