Falling Down sui side

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「届いたらすぐに連絡するね。じゃあ、おやすみ」 「あの、待って!」 「どうした? 眠くないの?」 「あの、私ね! 私……帰国するの明日。一時帰国。ミシェルと取材を受けるために。お土産、何がいい?」 「帰国か、いいな。お土産はいいよ。その後、ニューヨークだろ。忙しいな寿は。体調崩さないように気を付けてね。じゃあ、今度こそおやすみ」 「うん。粋も頑張ってね。おやすみ」  通話を切った。  帰国か。  少し、羨ましかった。帰って皆に会えたら、リフレッシュできそうだ。  でも、俺はここで頑張ると決めてやって来た。  結果を出して、寿を花嫁にして大手を振って帰るんだ。  クローゼットから、例の雑誌と指輪の袋を出した。  袋から箱を覗いた。  古めかしい木の箱に赤ワインみたいな深い色のビロードのリボンが掛かっている。  指輪はまたクローゼットにしまった。一番初めに、寿と一緒に見るんだ。  雑誌を広げた。寿のページには付箋を付けたからすぐに開けた。  いい笑顔だ。  俺といる時も、こんな顔をしている。  早く会いたい。  遠征の合間に会いに行こうか。いつなら行けるだろう。明日、ウィレムに相談してみよう。  なんだか興奮気味で、今夜はすぐに眠れそうになかった。
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