Falling Down sui side

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 あれから何回か蒼依さんとランチに行った。  誰か一緒に行く時もあれば、二人の時もあった。  蒼依さんは、やたらと俺に気を掛けてくれる。もしかしたら、俺が自閉症スペクトラム症っぽいって気が付いているのかもしれない。医者だし、気付いていても驚かないけれど、自分から言うのはやめた。  だいたい、俺はそんなにか弱くはない。  もう、ベルギーにも慣れたし、一人暮らしにも慣れた。仲間もできた。そんなにベタベタしてきたり心配したりしなくていい。  いつか時期をみて、ちゃんと話そうと決めていた。  そういえば、寿の誕生日の何日後かに、ちょっとした事件が起こった。『ウィレム浮気未遂事件』だ。  ちなみに、未遂だというと、ウィレムは怒る。  その日は、ランニング中に広瀬からビデオ通話が架かってきた。  画面の中には寿もいた。きっと、帰国の合間に遊びに行ったのだろう。  与井もいて、山原もいて、懐かしい面々少しも変わっていない懐かしい部屋に、少し切ない気持ちになった。寿に、公園に咲いていたスノードロップを見せた。  儚げで可愛らしいこの花は可愛いが、寿には似合わないと思っている。  寿には、気高い大輪の薔薇か、太陽に向かって太い茎を伸ばす大きなヒマワリが似合う。  そんな話をしようと思っていたのに、話しているところにウィレムがやって来た。 「”助けてくれ、スー”」
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