Falling Down sui side

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「”アンベルとは仲直りできたか?”」  ウィレムが首を横に振った。まだ許してもらえていないみたいだ。 「”日本の諺で、『身から出た錆』って言うんだぜ、そういうの。誠心誠意謝って許してもらうしかねえな”」 「”いや、だから、浮気なんてしてない! 食事をしただけだ”」 「”でも、お前のせいで、俺は寿との大事な時間を減らされたんだ。だいたい、アンベルがやきもち妬くのを分かっていて、知らない女と食事にいく気が知れない”」  絶対に、今の台詞を広瀬が聞いたら、御坂も大人になったと驚くと思う。 「”じゃあ聞くが、お前がアオイとランチに行くのは浮気ではないのか?”」 「”同僚と昼飯に行くのが浮気か? それに、俺はランチだけだ。夜は行ってない”」 「”コトブキはアオイを知ってるのか? アオイがお前を狙っていることを知っているのか?”」 「”狙ってるって、人聞き悪いな。同じ日本人だから、気に掛けられているだけだ”」  突然頭に、梓さんとの一件が思い浮かんだ。  寒気がした。これはもしかしたら、ヤバくないか?  同僚だろうがチームのメンタルドクターだろうが、俺は蒼依さんと二人で食事に行ったら駄目だったと、今気が付いた。  せっかく広瀬に褒めてもらえると思ったのに、これでは、ウィレムと同じだ。  黙っているべきか話すべきか。  嘘は吐けない。  今夜する予定の電話が、急に怖くなった。
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