Falling Down sui side

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 部屋に戻って、掃除を終えてから走りに行った。  頭の中は、寿にどう話そうかでいっぱいだった。  そういえば、毎日来ていたLINEが昨日は来なかった。  嫌な予兆しか感じない。もしかしたら、勘が鋭い寿は、初めから色々気が付いていたりするかもしれない。  走りながら頭を抱えた。  いや、抱えながら走るのは危ないから、心の中で頭を抱えた。  なんでこう、うまくいかないのだろう。  そんなに俺はチョロそうなんだろうか。ほいほいと靡いていくと思われているなら、本当に悔しい。  汗を掻いたら少しだけスッキリした。  走るのは、サッカーの次くらいに好きだ。走ると、頭の中も整理されるし、気分転換にもなる。  帰ってきてシャワーを浴びた。  シャワーの間も、どう話そうかで頭はいっぱいだった。皆が来るまでにはまだ時間がある。一足先にビールを飲みながらまた考えていたら、ベルが鳴った。  マチューかと思いドアを開けると、蒼依さんが立っていた。  このシチュエーションは二度目だ。ていうか、今夜は蒼依さんには声を掛けていないはずだ。野郎だけで飲む予定だったのに、なぜだ? マチューか? あいつが話したのか? 「話があるの。入っていいかな?」  入って良くない。入って欲しくない。  でも、入れないわけにはいかなかった。外は、結構な勢いで雨が降り出していた。 「玄関ドア開けてていい?」  訝しげに蒼依さんが俺を見上げた。  玄関ドアに、スニーカーを挟んだ。密室は避けたかった。
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