Falling Down sui side

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「いやいやいやいや、ちょっと待ってよ。俺が襲ったって、意味分かんねえだろ。とりあえず、これ着てよ」  カットソーを拾って腕に押し付けたら、そのままキッチンの奥に投げられた。  とにかく、このままでは駄目だ。  ソファに置いてあったパーカーを蒼依さんの肩に掛けたところで、玄関からウィレムの声がした。 「”ヘイ、スー。どうした、helpって……”」  下着の上に俺のパーカーを羽織る蒼依さんを見て、ウィレムが絶句した。当然の反応だ。 「”助けてくれ、俺は何もしてない。いきなり脱がれた”」 「”嘘よ! 私はスーに襲われたの”」  唖然とした顔のウィレムの視線が、俺と蒼依さんの間を行き来した。 「”アオイ、俺は君の言葉を完全には信用できないよ。スーは女を襲うような男ではないよ。三か月しかまだ一緒にいないけど、それぐらいは分かる。それに、これから女を襲おうとしている男が、ドアにスニーカーを挟んで無施錠にするわけないだろう"」  スニーカーをドアに挟んでおいて本当に良かった!  蒼依さんの顔が真っ赤から蒼くなって、しゃがみ込んで泣き出した。  ウィレムが俺を信用してくれるのは嬉しかった。  なんとか事なきを得そうだ。  ひとまず安堵して、蒼依さんが投げた服を拾いに行こうとしたら、またベルが鳴った。マチューだろうと思って、確かめもせずにドアを開けたのが失敗だった。  ドアの外には、雨で肩を濡らした寿が立っていた。
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