Withered Tears

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「寿! 大丈夫? 起きなさい、寿!」  やっと息が吸えた。  大きく息を吸い込んで目を開けると、蒼い顔で心配そうに覗き込む芙季がいた。 「あ、芙季さん……。夢か、良かった……」  夢だった。  汗をびっしょり掻いていた。喉もカラカラだ。 「酷くうなされていたから、驚いたわ。良かった、目を覚まして。どう、具合は?」  芙季がナースコールを押した。 「うん、熱かったけど大丈夫そう。芙季さん、何でここにいるの?」 「御坂粋の大家さんのとこのアンベルが、ミシェルの事務所にメールをくれたの。ミシェルから私に電話が来て、朝一で来たのよ。一緒にパリに帰ってきておいて本当に良かった」  心からアンベルに敬服した。凄い機転だし、素晴らしい行動力だ。芙季がいる事実に、心から安堵していたし、心強かった。 「粋は?」 「まだ集中治療室にいる。目を覚ましたかどうかは、ごめんね、私では教えてもらえなかった。もうすぐアンベルが来るから、教えてもらいましょう。何か飲む?」  水を飲んでいたら、医師と看護師がやって来た。  寿は、一日半も寝っぱなしだったようだ。  熱はすっかり下がっていた。
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