Withered Tears

12/21
前へ
/348ページ
次へ
 留守番の芙季は、パソコンを出して仕事をしていた。寿は、コートをウィレムに返して、芙季に二人を紹介した。  ウィレムのコートを着ていたことに、アンベルはヤキモチを妬くかと思ったが、全く気にしてないようだった。 「”粋の住んでいるレオネンのコーチのお嬢さんで、アンベルだよ。アンベルの恋人でレオネンのウィレム”」  恋人と紹介したら、アンベルが嬉しそうにはにかんだ。本当にウィレムを好きなのだろう。 「”はじめまして、寿のサポートをしているフキです。アンベル、機転を利かせてミシェルにメールを送ってくれてありがとう。とても助かったわ”」  一通り挨拶が済むと、二人は差し入れだと飲み物とお菓子を置いて帰って行った。  明日の退院にはアンベルたちは付き添えないからと、アンベルとメールアドレスを交換した。 「芙季さん、粋には会えなかった」 「ええ? なぜ」 「私は入院患者だから、感染症予防で駄目だって」 「そうか。確かにそうね。だったら、明日の退院の時に会いに行きましょう」  寿は、首を横に振った。 「入院の時に面会できる人を書いて出すみたいなんだけど、そもそも、私の名前が入ってなかったの。だから、面会はできない」  心配を掛けたくなくて笑ってみせた。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1714人が本棚に入れています
本棚に追加