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8. 再会
意識が浮上して目を開くと、大きな赤目が私を覗きこんでいた。目が合うとにこりと笑うけど、今日も顔色が悪いし肩で息をしている。
「血を吸われる前に倒れるとは、やわな奴め」
かすれ声だけどさっきとは違う。
先週聞いたのと同じ、声変わり前の高い声だ。
「会えた……」
起き上がると黒いマントが落ちる。横になった私にかけられていたようだった。
持ち上げて少年の背にかける。
「苦しそう。何があったの」
「臓腑に穴が開いているからな」
ゾウフ? 内臓のことかな。さっき見た血が本当なら、普通に致命傷で苦しいだろう。
というより――
(さっき負傷した設定も引き継いで演技してるの?)
羞恥心が捨てられない大人バージョンより、よっぽど演技力がある。
私が意識を飛ばした一瞬でさっきの人と入れ替わり、その上瀕死の演技もできるなんて。
外見もいいし名子役になれそうだ。
撮影以外で演技力を発揮する意味は分からないけど。
「弱体化した吸血鬼は、生命維持のため、稚児の姿をとる。血を飲めば元に戻る」
「なるほど。そういう設定なんだね」
「また設定?……ともかく血を飲ませてくれ。今日は此方が良い」
震える指が、私の首を撫でた。
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