6人が本棚に入れています
本棚に追加
冷たい指先がさらさら滑ってくすぐったい。
笑いながら肩をすくめたら、後頭部と肩を押さえられ、小さな口がぱかっと開いて近づいてきた。
煮詰めた苺ジャムみたいに濃い色をした瞳の真ん中で、熱っぽい光がゆれている。
「待って!」
「何だ」
「絶対噛まなきゃいけない?」
「ああ」
「首じゃないとダメ?」
「回復が早いからな」
「噛まれたら……また私は気絶するのかな」
「そうかもな」
「じゃあ、目が覚めるまでいてくれる?」
「いいだろう」
ではと近づいてきた顔面を、私は両手で挟んだ。
「まだ何か?」
思いきりしかめた顔もかわいい。
「起きたら写真、撮らせてほしい」
「気は進まないが……いいだろう」
「それと」
「これ以上は後にしろ」
後頭部と肩に置かれたままだった手に力が入る。先週よりも強い力で、彼に引き寄せられた。
今日はチクっとした痛みを感じて、噛まれたのが分かった。
最初のコメントを投稿しよう!