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2. バイトのきっかけ
私、田中莉緒がここでバイトを始めたきっかけは、「好きなレイヤーさんに会いたいから一緒にきて!」と友達に頼まれたから。
コスプレする人のことをレイヤーと呼ぶのを知ったのもその時で、ほとんど前知識がないまま訪れた。
だから遊園地に足を踏み入れてびっくりした。
日常では見られない髪色、目の色、見たことある衣装の数々!
国籍はおろか種族の壁をモノともせず、画面から召喚されたと信じてしまいそうな完成度の人もいて、目が釘付けになった。
(レイヤーさんってすごい! もっと見たい!)
一度で満足した友達とは正反対に、私は毎週通うようになった。
別に積極的に撮影したり、交流するわけではない。
あの非現実がガッと押し寄せる感覚に浸るのが好きだった。
とはいえ毎週いれば不思議がられ、声をかけられる機会はある。そのうち何人か顔なじみのレイヤーさんが増え、話の輪に混ぜてもらうようになった。
撮影のコツを教えてもらって、撮らせてもらったりね。
ただ、さびれた遊園地とはいえ毎週通えば入園料はかさむ。
年パスなんて慈悲はないのだ。
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