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7. 今度は大人バージョンですか
そして迎えた土曜日。
帰る人の波に逆らいながら、私は園内を歩いていた。
先週あの子と会った芝生にたどり着く。
神谷はまだ来ていないようだ。
「オイそこの掃除婦」
背中の方で、聞き覚えのある呼び方がした。
でも違う。
前はもっと可愛らしかった!
今思えば生意気だなぁって微笑ましく感じてしまう。
今日は明らかに成人男性の声だ。
いい声なのがさらに苛立つ。
その声に相応しい言葉選びってものをしなさいよ!
「……今日は掃除婦ではありません」
私服だけどここに勤めてると知られてるなら、心の声はどうあれ態度に出す訳にはいかない。接客業の悲しいサガである。
いっそ満面の笑みで応えてやると顔をつくり、気合を入れて振り返った。
(うーわ、イケメン)
いい顔なのがさらに苛立つ。
その顔に相応しい(以下同文)
あの子をそのまま成長させたように綺麗な男が立っていた。もしや血縁なんだろうか。
マントと牙と首輪の三点セットや、鋭さを増した赤い目の輝きも一緒だ。
唯一の違いは髪の長さだろうか。
目の前の男は背中まで届く銀の髪を、首の後ろで括っている。
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